「ゆうがた5」4月24日(木)+α 藤田京子
- 2014.04.27
先週の「ゆうがた5」木曜日でご紹介した内容に+αしてまいります。
ハートビートのコーナーで取り上げたのが、4月26日から公開された映画『ダーク・ブラッド』と
撮影中に23歳の若さで亡くなった主演俳優、リヴァー・フェニックスの魅力です。
『マイセン幻影』などの作品で知られるオランダの監督 ジョルジュ・シュルイツァーがメガホンをとり
アメリカ南西部の砂漠を舞台にしたサスペンスがかったこの物語は
主演俳優リヴァーの急死により、クランクアップまで10日ほどを残してお蔵入りとなってしまいました。
しかし、シュルイツァー監督が自ら映画を完成させることを決意し、
約5年の歳月をかけて未撮影シーンの再現や権利問題の処理にあたり、2012年完成に至りました。
野性的で向こう見ずな青年役のリヴァーの持ち味はもちろんのこと、
その土地に伝わるスピリチュアリティと文明至上主義の対比など
シュルイツァー監督がこの映画に込めたメッセージを、現代社会に改めて送り出したいという
強い思いがあったのだろうと感じさせるストーリーと映像です。
21年前、死の直前にリヴァーがうちこんだ映画を、ファンのみなさんには
ぜひその目で確かめていただきたいと切に願います!
その一方で若い映画ファンは、おそらくリヴァー・フェニックスという俳優をご存じない方も多いでしょう。
わたしも子どもの頃に「ジェームス・ディーンって、そんなにすごい俳優だったの?」と疑問に思ったのと同じように…。
まずは『スタンド・バイ・ミー』を観てください。そこにリヴァーの魅力がすべて詰まっているといっても
過言ではないと断言してしまいましょう!
スティーブン・キングの小説をもとにした、4人の少年が死体探しの冒険をするという物語で
当時15歳のリヴァーはリーダー格ながら影のある少年を演じています。
もちろん当時からハンサムな顔だちをしているし、演技力も批評家の折り紙付きなのですが、それだけではない、
孤独を抱えるアウトサイダーの寂しさが漂い、ワイルドな色気まで醸し出していたのです。
とにかくスクリーン上で、リヴァーの存在感と雰囲気は群を抜いていました。
幅広い世代の女性のハートを鷲づかみにした理由が、そこにあると思います。
もちろんその魅力が、少年から大人へと成長していく中で急速に失われていく可能性もあり
むしろそれが子役や少年俳優の一般的な変化ともいえ、子役が大成することが難しいとされるのだと思います。
ところがリヴァーはその少年期の雰囲気を損なうことなく、成長していったのです。
『モスキート・コースト』ではハリソン・フォードの息子役を演じ、
17歳で出演した『旅立ちの時』で早くもアカデミー賞助演男優賞にノミネートされました。
19歳で出演した『殺したいほどアイラブユー』
ケビン・クライン主演、ローレンス・カスダン監督によるコメディ映画で、これ、大好きな作品です。
浮気性のピザ店経営者が妻に何度も殺されそうになる、というシリアル・コメディで、
リヴァーは妻に思いを寄せる従業員役。
すでに単独での主演映画もありながら、クセのある役を求めてしまうという役者としてのサガと、
おかしな奴を演じても、観客を魅了する何かがスクリーンにもれだしてしまう生来のアイドル性。
ただカッコいいだけのヒーローには見向きもしないリヴァーの姿勢にも、ファンはますます惹かれていったのかもしれません。
その後選んだ作品も『マイ・プライベート・アイダホ』 『アメリカンレガシー』と
いわゆる普通の社会になじめない人物にシンパシーを覚えていたのだろうと思わせます。
生きていれば今年44歳。
ただただ「惜しい」という言葉しかありませんが、輝いていたリヴァーの姿を観ることができることを
幸せと思い、同じ時代に生まれてよかったと考えたいと思います。
最後におまけ。
親友キアヌ・リーヴスの『殺したいほどアイ・ラブ・ユー』でのショットを(笑)。
オトナのみなさまの自由時間の過ごし方のご参考になれば幸いです。